更新日: 2023年03月06日
水なすの原種といわれる馬場なす。大阪府貝塚市の馬場地区で江戸時代から栽培されていました。しかしその生産者は極めて限られています。今回はその1軒である畠農園に伺い、馬場なすについてお話をお聞きしました。
畠農園が農業を始めたのは江戸後期。貝塚市の馬場地区でこの地に根ざした栽培が続いてきた。ただし商品としての「馬場なす」が生まれたのは約20年前のこと。当時、地域の名産をつくろうという動きのなかで、畠さんの父親が本格的に商業栽培に着手した。それまでは単に「中長系の水なす」と呼ばれていたこのなすに、はじめて「馬場なす」という名が与えられた。
水なすの原種ともいわれる馬場なすは、一般的な水なすよりもさらに皮がやわらかく、果肉はとても緻密で水分をたっぷりと含んでいる。形は普通のなすに似た細長い形状で、ヘタには鋭い棘、果皮は全体に濃い赤紫色、首元だけ青みがかるという個性的な外見を持つ。その繊細さゆえ栽培の難易度は高く、商業ベースに乗せるまでに3年を要したという。現在も生産農家はわずか3軒にとどまる。
収穫はビニールハウスで4月中旬〜7月初旬、露地では6月中旬〜10月下旬まで。ハウス栽培のものは皮がより薄く、露地栽培のものは味が濃く皮の色も深くなる傾向がある。
畠農園のこれまでの取り組みは、業界からも高く評価されている。2007年には農事功績者表彰で緑白綬有功章を受賞。2023年には大阪府の「なにわの伝統野菜」に認定された。認定のハードルが高いことで知られるこの制度での認証は、品質と歴史の証明でもある。
「馬場なすは、貝塚の馬場地区、畠農園から出た苗木でないと馬場なすとはいえないと考えています。ブランドを守るため日々奮闘しています。」
品質の低いものや出所不明のものが流通するのを防ぐため、商標も取得してブランドを管理している。将来的に馬場なすを作りたいという人が現れた場合も、納得できる品質が担保できるなら種を渡すことも考えているという。守ることと、繋いでいくことの両立を見据えた姿勢だ。
「日々伝統を大事に、より良いものを作ろうと土づくり、栽培方法の改良に取り組み、化学農薬や化学肥料の使用量を最小限に抑えながら農業を行なっています」と畠さんは語る。
畠さんが真っ先に勧めるのは「生食」だ。皮が薄く傷つきやすい性質上、生で食べるのはA級品が向いている。浅漬けにする場合も同様で、舌触りに差が出る。一方、炒め物や煮物などの加熱調理であればB級・C級品でも味に遜色はなく、十分においしく楽しめる。
HATAKE FARM'S RECIPE
馬場なすの生食・浅漬け
生皮ごとそのままかぶりつく。新鮮なA級品で、たっぷりの水分と甘みをそのまま味わう。
漬浅漬けはA級品を使用。皮の舌触りが決め手で、塩でやさしく漬け込む。馬場なすならではのやわらかな口当たりが楽しめる。
炒炒め物や加熱料理にはB・C級品でも十分。素材の味を活かすシンプルな調理法がおすすめ。
「日本の野菜全般に言えますが、素材の味をできるだけそのまま活かす調理法がオススメですね。」——畠盛人
生産量が極めて少ないため、一般的な流通経路での入手は難しい。しかし畠さんは「馬場なすのブランド価値は高まってきている」と静かな自信を持って語る。貝塚市のイベントへの出品など、非常設の販売の機会も継続的にあるとのことで、機会があればぜひ味わってみてほしいと話す。
畠農園