更新日: 2024年01月21日
初夏になると無数のホタルが飛び交う、豊かな自然が広がる和泉市のとある森。ここで全く異なる職業から養蜂の世界に飛び込み、現在は大阪府下13か所で養蜂場を営む樋渡さんにお話をお伺いしました。
樋渡さんはもともとIT業界でデザイナー、コーダー、ディレクターと幅広く経験を積んできた。転職を考えたとき、最初に浮かんだのは「青空の下で有機農法を」という構想。しかし実際に学ぶと体への負担が大きく、そこで出会ったのが養蜂という世界だった。
「『はちみつが好き』というより、『みつばちが好き』ではじめたんです。生き物と共に生きていく、というのがとてもおもしろいなと思って。」
最初は週末養蜂からスタートし、道の駅に出荷したはちみつは毎年完売。手ごたえを感じて専業に踏み切った。現在は大阪府下13か所の養蜂場に計140〜150箱を構え、1箱あたり3万〜5万匹という膨大な数のみつばちと向き合っている。
「1つの箱はさぼっていて蜜を集めない、もう1箱はたくさん集めてくる」と樋渡さんは笑う。箱ごとに異なる個性を読み解きながら管理することが、この仕事のおもしろさだという。
「いずみつ」では現在、百花蜜・桜・アカシア・ダリヤの四品種を展開している。なかでも樋渡さんが特に推すのがダリヤ蜜だ。黒砂糖のような濃厚なコクがありながらクセがなく、コーヒーとの相性が抜群。世界的にも流通が少ない希少な品種である。
| 品種 | 味わいの特徴 | おすすめの使い方 |
|---|---|---|
| 百花蜜 | 甘みと香りのバランスがよい万能タイプ | 食パン・料理全般 |
| 桜 | 香りが強めであっさりとした甘さ | ヨーグルト |
| アカシア | 香り豊かでさっぱりした風味 | ヨーグルト・紅茶 |
| ダリヤ | 黒砂糖のような濃厚なコク、後引く甘さ | コーヒー |
みつばちは養蜂場から半径2kmの範囲を飛び回り蜜を集める。そのため採れる場所ごとに味わいも変わり、和泉市産の「いずみつ」のほか、土地の名前を冠した地域ブランドとして展開している。
はちみつは冬になると結晶化して固まることがある。高温処理を行えば固まりにくくなる一方、加熱するほど栄養価は失われていく。「いずみつ」では、栄養価と香りを守るため非加熱にこだわり、約40℃の湯煎でゆっくりと溶かしてからボトルに充填している。
採蜜のタイミングも重要で、蜜枠の状態を見極めながら香りが最も高くなる瞬間を狙って収穫する。あっさりしていて独特のクセがない、「いずみつ」独自の風味はこの丁寧な工程から生まれる。
「みつばちが好き」ではじめた養蜂だが、今ではすっかりはちみつも大好きになったという樋渡さん。そんな養蜂家本人が太鼓判を押すのがこの食べ方だ。

もう一つのおすすめは、オリーブオイルにブラックペッパーとはちみつ、ピンクソルトを合わせてバゲットにつける食べ方。シンプルながらはちみつの甘みとスパイスの香りが絶妙に重なり合う。
蜻蛉池公園の指定管理者からの声がけをきっかけに、2023年6月、園内の倉庫を改装して「はちいろカフェ」をオープン。その場所で採れたはちみつを使ったメニューを提供しており、養蜂家お墨付きのトマトスライスにはちみつソルトをかけた一皿も味わえる。
樋渡さんが今後描くのは、はちみつを起点にした地域のコミュニティづくりだ。子どもたちへの課外授業で「自然の大切さ」を伝え、地域のお祭りやイベントに出店してはちみつレモネードやダリアの加工品を並べる。「お金じゃなく、町で集めたゴミと交換できる場をつくりたい」とも語る。
「養蜂をしていく中で、すべてが繋がっているということをみつばちから教えてもらいました。それをほんの少しでも子供達に伝えていきたいのです。」
小さな虫が結ぶ、人と自然と地域の縁。hachiiroのはちみつには、泉州の豊かな生態系と樋渡さんの想いが凝縮されている。
hachiiro