更新日: 2026年06月01日
大阪湾を一望できる、貝塚にある小高い山。そこに今年、創業101年目を迎える井川みかん園があります。そこで栽培されるみかんは、数々の賞も受賞しており、通信販売は予約で完売の大人気。今回は園主の井川さんにお話をお伺いしました。
貝塚市の小高い丘に広がる井川みかん園。祖父の代からみかんを作り始めて今年で99年目。観光農園は父親が45年前に開き、現在は園主・井川雅仁さんが23シーズン目を迎えている。
園の前をさえぎるものは何もなく、晴れた日には関西国際空港や六甲山まで見渡せる。「先祖代々の土地にはとても感謝しています」と井川さんは言う。かつてこの地域には80軒を超えるみかん農家が軒を連ねていたというほど、みかん栽培に適した土地だ。
傾斜地ゆえの作業の大変さはあるが、水はけの良さが高品質なみかんを生む。山の中腹には芝生広場があり、レジャーシートを広げてお弁当を食べたり、子どもたちが遊んだりと、みかん狩りとともに一日中楽しめる場所になっている。
「お客様の笑顔を見られたり、喜びの声を直接聞けるのは、何よりも活力になります。今後も可能な限り、先祖から受け継いだ観光農園を続けていきたいと思っています。」
井川みかん園のみかんの最大の特徴は「味の濃さ」。糖度の高さとほどよい酸味に加え、良い土から生まれる濃密な味わいが、長年のリピーターを生む理由だ。
みかん狩りでうまいみかんを見つけるコツを、井川さんに教えてもらった。オレンジ色が濃く、表面の皮がツルンとしていて、軸の反対側の点が小さいものほど美味しい。軸は細い方が身がしまっている証拠だ。収穫のときは軸を持ってみかんを同じ方向にくるくる回せば、ハサミを使わずきれいに取れる。
IKAWA MIKAN'S TIPS
とりたて・数日後──味の変化を楽しむ
白い繊維(白すじ)を取るなら、軸側から引くとすっきりきれいに取れます。果肉の袋(じょうのう)は栄養価が高いので、ぜひそのまま食べてください。──井川雅仁
果樹農園である以上、1シーズンに収穫できるみかんの総量は限られる。そこで井川さんが7〜8年前から力を入れてきたのが、加工品づくりだ。
みかんジャムとストレートジュースを主軸に、ジュースをベースにしたみかんの食パンも手がける。パンには香りの高い皮を乾燥させた陳皮(ちんぴ)を練り込み、みかんの風味をまるごと閉じ込めた。さらに成熟前に間引かれる摘果みかんを使ったドレッシングやビールも開発。みかんを一切無駄にしない発想から、個性豊かなラインナップが生まれている。
通信販売のみかんは毎年シーズン開始から1ヶ月ほどで完売。口コミで広がった固定ファンが全国にいる。
観光農園の仕事は「魅力とやりがいにあふれている」と井川さんは言う。お客様を受け入れるための準備は決して楽ではないが、声を直接聞ける場があるからこそ、10ヶ月間の手間のかかる栽培を続けられる。
みかん栽培は重労働な割に収入が少ないという現実もある。かつて80軒以上あったこの地域のみかん農家は、現在では5〜6軒にまで減った。それでも井川さんは「先祖から受け継いだ土地と観光農園を守り続けたい」という思いをぶれさせない。
訪れた人が絶景を楽しみながら自ら手を伸ばして収穫し、その場で食べる。産地でしか味わえない「とりたて」の体験が、何よりの付加価値だと井川さんは信じている。